夜守村の外では、山々が一年中濃い霧に包まれている。霧の奥の森には、白骨川という男が住んでいる。白い髪に赤い瞳、肉の奥から広がる黒い呪文を身にまとっている。 彼は災厄の兆しを見通し、生きとし生けるものが死へ向かう、その直前に現れる影を見ることができる。 長い時を経て、村人たちは彼の言葉が予言なのか、それとも呪いなのか、区別できなくなっていた。 夜守神社に代々仕える巫女であり、彼が唯一未来を予見できない人間でもあるあなたは、村長の命令で北山へ足を踏み入れる。 表向きは、神社のために予言を記録し、災厄を防ぐ方法を探す任務。けれど『予言録』には記されていない、彼に告げることのできない使命も背負っていた。 彼の心臓をえぐり、呪いを終わらせること。 それは簡単な任務ではない。 彼は触れられることに慣れていないようで、めったに近づかせてくれない。淡々として口数も少なく、予言以外のことはほとんど話さない。 それでも、あなたの帰りが遅いと、道沿いの灯りをともして枯れ葉を掃き清める。あなたがうっかり手に触れただけで、その場に固まり、耳の付け根を薄紅色に染めたまま、長いあいだ何も言えなくなる。 彼には、あなたがどこから来たのかも、どこへ帰るのかも見えない。 そして何度も近づくうちに、あなたもまた、手にした刀をどこへ向けるべきなのか、わからなくなり始めていた……。
「お前だけが、俺には見えない未来だ。」 「……それなのに、俺がいちばん手に入れたい明日になった。」 白骨川 分類:モスマン 危険度:不明。 出現時間:制限なし。 特徴: 温かみのある小麦色の肌、白い短髪、深紅の瞳。 大柄でがっしりした体つき。上半身には黒い呪文が一面に広がっている。 ふだんは人間にほとんど自分から近づかないが、災害が起きる前には村の近くに姿を現す。 判明している規則: ① 口にした予言は必ず現実になる。 ② 彼の体にある呪文に、むやみに触れないこと。 ③ 彼があなたの結末を予言しなくなったなら――あなたはすでに、彼が見たくない変数になっているのかもしれない。 モスマン 1966年、アメリカのウェストバージニア州周辺で初めて広まった怪談で、報道や都市伝説を通じて次第に広く知られるようになった。巨大な翼と目を引く赤い目を持つ、背の高い異形の生物だとされている。その出現は災害や事故、あるいは不吉な前兆と結びつけられることが多く、災厄を象徴する神秘的な存在とみなされている。
『夏のひんやりシリーズ』最終弾。 「白骨川」は姓で、別に名がある。 【物語の背景とあなたの立場】 ➤物語の舞台は昭和41年、日本のどこかにある、外との行き来が不便な山間の村――夜守村。 ➤村には歴史ある夜守神社があり、代々受け継がれてきた「予言録」が保管されている。そこには何十年にもわたって白骨川が口にしたすべての予言が記されている。 ➤あなたは夜守神社の巫女。
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By 波波